【マラウイ日記】マラウイの理学療法を学ぶ!6週間の病院研修が無事に終了!!マラウイの病院について【JICA海外協力隊】【マラウイ5-11週目】
Mazuka bwanji? どうも、マラウイでボコボコにもまれている理学療法士ROM(@ROM00curiosity)です。
前回の続きです。
チェワ語訓練最終週
マラウイに来て5週目カントリーツアーの後は、再びチェワ語の語学訓練でした。
チェワ語の基礎の基礎はわかったと思いますがまだまだ会話文は全然聞き取れません。ところどころ、「この単語知ってる!」ってのが増えてきたという感じです。
語学訓練の最終日はテストを受けました。
内容は筆記、リスニング、リーディング、スピーキングの4種類でリーディングとスピーキングが難しかったです。
そういえば、テストの結果はJICAにメールで伝えると言われたけど、まだ来てないな…
KCHにて理学療法士の病院研修スタート!!
6週目からはKCH(カムズ・セントラル・ホスピタル)にて理学療法士の病院研修を6週間受けます。
この研修をやらないと理学療法士のボランティアとして病院で働けないそうです。
マラウイにはいくつか病院の種類があります。
- セントラル・ホスピタル:国立の病院
- ディストリクト・ホスピタル:県立の病院。大抵の場合はまずここにいく。
- ヘルスセンター(クリニック):村単位?の病院。本当に簡単な処置とかしかしない
- プライベート・ホスピタル:私立の病院。医療費がかかるがその分はしっかりしている。(らしい)
- NGO等経営のホスピタル:NGO団体が出資している病院。
- 教会経営のホスピタル:教会が運営している病院?
確かこんな感じの種類があります。
マラウイでは基本上の3つは医療費は無料です。診察料も薬代も車椅子代も無料です。(ただし物があるとは限らない)
その代わり、マラウイでは医療従事者が医療行為・医療補助以外のことをすることはほぼなく、患者の介護:排泄管理や着替え、食事、移動・移乗などいわゆるADLのほとんどを家族( guardian )が行います。そのため、病院に入院すると患者だけでなく、家族も一緒に病室に寝泊まりします。
この点が日本の医療事情との一番の違いだなと感じました。
家族も一緒に病院に泊まることになるので、仕事や家のこともほとんどできないと思います。とても日本じゃ考えられないですね。
しかしその一方で、一つメリットはありまして家族に常にそばにいるから家族指導がとてもやりやすいです。本人だけじゃなく家族と一緒に病気を乗り越えていくという面ではある意味日本よりも優れていると感じました。
ちなみにマラウイの病室は基本的にプライバシーなんてものはありません。それどころかベッドの数も足りてないのでベッドとベッドの間や廊下にマットを置いてそこで患者さんが入院している状態です。
で、KCHでの研修は6週間のうちに6つの科を回ります。KCHで理学療法士が関わっている科は
- Cardio Respiratory
- Pediatrics
- Neuro
- Burns
- Orthopedic
- Cancer
こんな感じです。
1週目:Cardio Respiratory
循環器と呼吸器です。といってもほとんどはICUやHDU(high dependency unit)でのリハビリです。
ICUやHDUは(意外といっては失礼ですが)しっかりしており、モニター類もちゃんとあります。他の病棟と違って床にマットをしていることもありません。
医師や看護師もちゃんと常駐しています。
疾患としては、術後の患者や脳卒中の急性期、呼吸器疾患などです。あまり心疾患の患者はいなかったように思えます。
PTの仕事は、基本的にはベッドサイドでのROM、座位訓練、立位訓練、歩行訓練等の運動療法、呼吸器疾患のある患者に関してはChest therapy(呼吸器リハ)をしていました。
またこちらでは酸素吸入量はPTが決めているようです。PTがリハビリ中に酸素量の調整をしながらSpO2を確認して決めているようです。
2週目:Neuro
神経科です。主に脳卒中を対象としています。
マラウイには回復期病院・病棟というものがないようで、急性期の入院が終わったら基本的にすごに家に帰るようです。
そしていわゆる回復期は自宅から病院に通ってリハビリを受けている方が多いようでした。
リハビリの内容は基本的には日本と同じでPTは歩行訓練等をOTは上肢動作訓練などを行なっています。
日本と違うなと思うところは、あまりバイオメカニクスを意識していないところとADL訓練をあまりしないところです。
日本だと動作分析をすごくすると思いますが、マラウイで動作分析をしているところまだ見ていません。
基本的にマラウイでは症状に合わせてリハビリメニューが決まっている印象でした。そのため、自主練などの指導はしますが、患者さん個人個人に対する動作指導はあまりしていないよう感じます。
ちなみにリハビリの頻度的には週3回くらいだったと思います。それも、1回のうちPTかOTのどちらかといった感じです。
リハビリ自体はリハ室(Gym)で行い、治療台やエルゴ、ハンドエルゴ、階段、平行棒などのリハビリ器具はある程度揃っています。
余談ですが、治療台と階段においてはJICAの支給品のようです。おそらく以前KCHで活動していた隊員が申請したのだと思います。とても有効活用されており今ではそれ無しでは考えられないと思います。
3週目:Pediatrics
小児リハです。
小児では、CP(脳性麻痺)、てんかん、栄養失調、小頭症など見学しました。
マラウイでは、発達状態を体重と運動で判断しているようでしたが、決まったデンバー発達スケールのようなスケールは使っていないようです。
リハビリでは、ROMやニーリング、起立台を使ったスタンディングなどをしていました。
小児リハビリは学生時代の実習でしか経験がないので、詳しいことはわかりませんが、子供の注意の引き方がイマイチだったり(だた音の出るおもちゃ振るだけ)、子供の動作経験を増やすような工夫があまり見られないなと感じました。
むしろ、その辺は親御さんのが上手にリハビリをしていると感じました。
スタンディングは基本的に起立台に子供を固定したらあとは親に任せるといった感じでした。
4週目:Cancer
がん病棟です。
がん病棟は建物自体が離れており、Cancer centerという最近建てられた病棟でかなり綺麗です。
確かイギリスかどっかの国が出資していた気がします。
小児がんから大人のがん患者を観ました。
事前情報によるとマラウイでは頸部がん(初めて聞いた)が多いらしいのですが、僕は今回は見れませんでした。
この病棟では、海外からの医者が来ており毎朝その医師が回診していて他の科よりも発展している印象があります。
また、がん病棟では小児がんにも力を入れているようであり小児がん病棟の横には遊具があり、毎週月・水・金の午後にはプレイセラピーがあり子供たちが集まっておもちゃで遊んだりゲームしたりダンスしたりして遊ぶイベントもあり、理学療法士が率先して行なっています。
プレイセラピーをする場所。おもちゃがたくさんあります。たまにアリが大量発生します。
5週目:Orthopedic
整形外科です。
整形外科はもっとも患者数が多いらしく、病棟もCancer centerのように別にあり一番新しい病棟になります。
去年(2023年の11月ごろ)に建てられたそうです。
この病棟は通称LION(Lilongwe Institute of Orthopedics and Neurosurgery)と呼ばれています。
疾患としては、主に骨折など外傷が多く手術後の患者がほとんどです。
骨折の種類としては、脛骨骨折が一番多い多かった気がします。原因としては交通事故(特にバイク)がやはり多いらしいです。
手術式としてはなぜか創外固定が圧倒的に多かったです。
また人工股関節置換術も行えるようで、個人的にすごいなと思ったのは手術の説明と術後の自主トレの方法を記した資料がちゃんと用意されていることです。
こんな感じ。
またさらに驚いたのが、人工関節の方用の性行為の体位の方法を記した資料まで用意されていました。
これはおそらく日本と違い手術を受ける年齢が比較的に若いからだと思います。
最後の最後でノルウェーの理学療法士とお会いする機会があったのですが、やはりリハビリ先進国ノルウェー。マラウイのPTたちにするアドバイスも的確スマートだし、寄付するものすごかったです。
CMP(continuos passive motion:持続的他動運動)
初めて見ました。日本でも急性期の病院とかにはあるんですかね?病院勤めしたことないんでわかりません。笑
こいつも寄付してました。
そのほか、踏み台やバランスボード、バランスボール、ハンドセラピー用の評価道具などを寄付したようです。(お金持ちだなー)
多分このLIONの設立にも何らか関与していると思います。(レッドカールついているし)
6周目:Burns
熱傷科です。
マラウイでは熱傷の事故がとても多く熱傷専用の科があります。特に乾季(寒い時期)である5月ごろから9月ごろは患者数がとても多くなるそうです。(マラウイでは基本暖房はないので、焚き火など火を使います)
日本では熱傷患者のリハビリどころか重度熱傷の患者自体を観たことがなかったので、この科は一番ショッキングでした。
日本では火事に巻き込まれないと考えられないようなレベルの重度の熱傷の患者が大勢います。9の法則で言うところ50%以上の患者もかなり多いです。そして特に0〜5歳くらいの子供の熱傷患者とても多かったです。
マラウイでは、リハビリする前に包帯を取るのですが、包帯自体が皮膚に引っ付いているので包帯を取るのに激痛を伴います。タダでさい痛いのにその上で関節が固まらないようにPTが関節を動かすので、終始絶え間なく子供の泣き叫ぶ声が響きます。大人でさえ痛みで震え包帯を剥がすだけ今にも失神しそうな表情を浮かべます。
正直、8年間理学療法士として働いてきた中で一番キツい経験でした。
そして、Burnsも小児の患者が多いので毎週火曜日はプレイセラピーがあります。
なぜか日本の歌でダンスしろと言われ頑張ってダンスしたのいい(恥ずかしい)思い出。マラウイ人は歌とダンスが大好きなのだ。
マラウイの理学療法士・リハビリ事情
マラウイの病院スタッフは基本的には公務員扱いになるそうで、例えば理学療法士が国家試験に受かりインターンを終了したらすぐに就職というわけではなく、Ministry of Health(健康省)から要請を受けるまで就職できないそうです。
それまでは、家でニートしてるか腕を鈍らせないためにボランティアとして働くらしいです。
マラウイの理学療法士はマラウイの中でも給料はかなりいい方らしいですが、それでも働きによって給料が変わるとかではないので真面目でないと言ったら語弊がありますが、イマイチ上昇志向が足りないと言われる所以の一つだと思います。(まぁ、スキルアップしても給料が上がらないのは日本でも同じですが)
とはいえ、KCHの理学療法士のレベルがものすごく低いかといえば、個人的にはあまりそうは思えませんでし、むしろ、こちらに質問し意見を求められることが多く。科によっては上のセラピストが報告を聞きフィードバックしているところもありました(一部の科だけですが)
理学療法士のレベルとしては知識は十分にあります。むしろ、彼らは英語で医学を学びかつ日本よりも理学療法士が行える範囲が広いので、ワールドスタンダードな知識を持っていると思いました。むしろ、日本は日本独自の評価や治療をしているんだなぁと思います。医療においてもガラパゴスですね。ただ、医療は科学だけで成り立っているのではなく、それぞれの国や地域の価値観や宗教観、地域性などもからんでくるので独自の発展をしてくことは一概に悪いとは思っていません。
ただ、どうしても私たちは基本的に医療を日本語で習っているので、世界の医療についていくという面では英語で医療を学びワールドスタンダードの基礎を学ぶ必要があると感じています。
話がかなり逸れてマラウイの理学療法士事情でなくってしまいましたね。
とまぁ、知識の面では「ボランティアなんていらんやろ」と思ってしまいますが、一方で介助技術や治療技術はあまり良いと思えませんでした。
介助においては、上で述べたように基本的な介護を家族に任せているのであまり介助や介護は上手ではないと思います。
そして、これは治療技術につながりますがもっと介助を取り入れたADLベースの治療介入をするともっといいのではと思いました。
マラウイのADL練習はどちらかというとパワープレイなところがあって結構強引に歩かせたりします。見ているこっちは内心ハラハラドキドキです。
ですが、マラウイ人。さすがというか元の身体能力が高いためか意外と歩けてたりするので驚きです。(転倒リスクはかなりある)
日本だと絶対に杖と装具必要だろ!といった人でも普通に杖なし装具なしで歩かせます。まぁ杖や装具がほとんどないのも原因でしょうが…
まぁだからこそ、個人的には理学療法士よりも義肢装具士が技術指導に来た方がいいのではと心の中で思っています。
マラウイでテニス再開しました!
この頃から毎週土曜日はテニスに行くようになりました。
JOCVのメンバーだけでなく、JICAのスタッフやその家族、大使館のスタッフさんたちが参加します。
みなさん結構お上手だしかなり上手い方もいて結構ボコボコにされます。笑
しかし、おかげでストレスがかなり解消されて助かっています。
テニスの話もたくさんできるのでまたテニス熱が再燃しました。自前のテニスラケットとシューズを持ってこればよかった。
ここだけの話、シューズがコートに合ってないせいでかなり滑り踏ん張りが効かず、右のふくろはぎを肉離れしちゃいました…(歳かな…)
ちなみにラケットはドミに何本かあり、中にはなかなか良いラケットもあります。
派遣先のムチンジにはテニスコートがないのでこれからは毎週土曜日は首都のリロングウェに帰る必要がありそうです笑
マラウイでエチオピア料理を食べたよ
最後の週のテニスの帰りにテニス仲間と同期隊員と一緒にエチオピア料理を食べに行きました。
食べる雑巾と名高い噂のインジェラというエチオピア料理。薄いクレープのようなエチオピアの主食で発酵食品独特の酸味があります。むしろ臭いと味はほとんどありませんでした。
実際食べると「雑巾とは?」と思うほどキツくもなく、むしろちょうどいい酸味が他の具材といい感じにマリアージュして絶品でした。
知り合いの大使館の方は3日連続でインジェラらしいのですが、うん。その気持ちはわかる。料理だけならエチオピアに住めると思いました。
しかも全体的にかなり栄養バランスもいい気がします。野菜、豆、肉、主食、発酵食品が揃っているのでとても健康的でヘルシー。そんなに脂っこくないので胃にもたれる感じもないです。
そして、食後はエチオピアコーヒーをいただきました。
これが、うん、めちゃくちゃ美味い!
コーヒーの香りと渋みが素晴らしい。
そして、エチオピアではコーヒーにテナ・アダムというハーブを入れるのですが、これが爽やかな香りと甘い香りでコーヒーを飲む瞬間に味覚でなく嗅覚で甘味を感じさせてくれます。
とても不思議な風味でした。
また行きたい!そして日本に帰ったらエチオピア料理店探さないと。
まとめな感想
KCHでの6週間の研修は長かったような早かったような、終わってみれば早かった…いや長かったな。
初めのうちは、慣れないことのオンパレードでかなりしんどかったです。
いや、最初はまだマシでしたね。モチベーションで耐えれたから。
3週目あたりが一番しんどかったと思います。
2週目の途中でお腹の調子を悪くしてから、徐々にメンタルもダメージを受けて3週目には軽い鬱状態だったと思います。
海外で鬱状態になるとホームシックになるんですね。
もうとにかく、英語(特に医療英語)がわからない、チェワ語がわからない、日本の理学療法と全然違うと言うよりマラウイの習慣というか空気感がまだ全然掴めていない、むしろ何の役にも立ってなくてただのお荷物になっているのでは?と感じる。自分なんかが理学療法士としてボランティアに来たのはおこがましかったのでは?間違いだったのでは?と思えてくる。行かないほうが良いのではと次第に病院に行く足が出なくなったり、自分の選択が全て間違いだったのでは?など
かなりマイナス思考に囚われ行動や体調にも如実に現れて大変でした。
正直3週目は3日休みました。
また、6週間ずっとドミにいるのもなかなか独りに慣れないので個人的にはかなりしんどかったです。なかなかストレスを発散できるタイミングなくて苦労しました。
私みたいに内向的な人間はキツい時の集団生活はかなりしんどいと思います。
ですが、4週目からは自分なりにストレス対策・不安対策をしたのとテニスのおかげでなんとか無事に乗り切ることができたと思います。
いや〜、ほんと一緒にテニスしてくれた先輩隊員やVCとその家族、大使館の方々には感謝してます。テニスしてるだけかなり心が救われました。
おかげで多少きつくても
「学生時代の実習に比べたらまだマシだ」(本当に辛かった。目の前が真っ暗というか真っ白な感覚に陥ったのはアレが最初で最後でした)とか
「ここでドロップアウトしたらダサすぎる」
「ここはマラウイだから最悪テキトーに過ごせばいいや」
と自分を鼓舞してました(※多分、鬱状態の時にこういう励ましは本当は良くないと思う)
とまぁ、そんな感じで1日1日を乗り越えていくとだんだんと慣れてきて最後の2週間くらいはまだまだ足でまといだけど病院でできることも増えてきて、どんなところを見るべきかが何となくわかってきて、しんどいけどメンタル的なしんどさではなく純粋な仕事としてのしんどさに変わり、最後は自分なり楽しむことができたと思います。
むしろ、せっかく慣れたからここでは終わるのは勿体無いと気がすらしました。
とまぁ。全体的にかなりしんどかったけどその分実りのある時間を過ごせたと思います。甘くも酸っぱくもくなく、渋く濃厚なよく分からない味の実になったかと(苦笑)
そして、おそらく任地に行っても5週間くらいはまたこんな感じになるんだろうなぁ。